前回はファクターリターンについて簡単に説明しました。ファクターリターン=IC(情報係数)と説明しましたが、これはベータとは違うものでしょうか?それとも同じものでしょうか?
結論から言うと、これらは同じものではありません。
株式クオンツ分析においては、情報係数(IC)とベータ、どちらも投資判断を下す際に参考にする情報で、それぞれがどのように計算され、運用パフォーマンスの向上にどのように役立つかを見てみましょう。
ICとベータについて深く掘り下げてみよう。
え!、ICってベータのことじゃなかったの?
情報係数(IC)は、予測と実際の結果との間の相関を測定するものです。具体的には、以下のように計算されます。
$$ IC = \frac{\Sigma (x_i – \bar{x})(y_i – \bar{y})}{\sqrt{\Sigma (x_i – \bar{x})^2 \Sigma (y_i – \bar{y})^2}} $$
ここで、$x_i$は予測値、$y_i$ は実際の値、$\bar{x}$と$\bar{y}$ はそれぞれの平均値を表します。ICが高ければ高いほど、予測の精度が高いと言えます。
いや、数式はちょっと無理です.. 。
大丈夫!すぐに理解できなくてもOK。要は、「予測」と「実際の数値」の関係性を示しているってこと。
情報係数(IC)は、投資モデルの予測精度を評価するための指標です。予測値と実際の値が一致している程度を示すため、モデルの性能を直接的に評価することができます。前回の時価総額を例にとると、時価総額という「実際の数値」から「予測」されるリターン、すなわちどれだけその株が儲かるか(上昇するか)という関係をICが示しているということになります。
で、ベータはICと違う計算式になるっていう話?
その通り!数式嫌いなのに申し訳ないが、ベータはこんな感じ。
$$ \beta = \frac{\Sigma (r_i – \bar{r})(m_i – \bar{m})}{\Sigma (m_i – \bar{m})^2} $$
ベータは、ある株式のリターンが市場全体のリターンにどれだけ敏感であるかを示す指標だ。
確かにさっきと何か違う。「予測」との関係じゃなくて、どれだけ敏感に反応するかってことね。
ここで、$r_i$は株式のリターン、$m_i$は市場全体のリターン、$\bar{r}$と$\bar{m}$はそれぞれの平均リターンを表しています。ベータが1より大きければ、その株式は市場全体の動きよりも大きく動くことになります。ベータが1に近い数値であったり、さらにそれ以上であれば市場全体に対して敏感であると言えます。ベータは、通常「株式のリスク」を評価するための重要な指標として利用されます。
数式のことはさておき、何となくファクターリターン(IC)とベータの違い、何となくわかったかな?
えっと、ICは予測と実際の数値との関係。で、ベータはどれだけ敏感かを測るもの?
その通り!君はなんて理解が早いんだ。感動するよ。
わかったような、わからないような…
ベータは、自分の保有するポートフォリオや銘柄が、どれだけ株式市場全体の動きの影響を受けるかを示します。例えば、ベータ値を落とす(ベータの低い銘柄に乗り換えるなど)で、株式市場全体の動きから身を守ることができます。逆にベータが低いことが原因で、株式市場全体の値上がりについていけてないこともあり得ます。
一方でICについては、予想されるリターンの大きさを示しています。例えば時価総額のファクターリターン(IC)が大きいとき、すなわち時価総額が大きいほど予想される将来のリターンが大きくなることが期待されるので、自分のポートフォリオが小型株ばかりに偏ってないかを確認したり、大型株に乗り換えたりする機会を提供します。