ファクターリターン(情報係数、IC)を知り得たことで、どのように実際の株の運用に活かせば良いのでしょうか。もっと言うと、ファクターリターンで保有する株や今日売買する銘柄で利益を出すことはできるのでしょうか。
残念ながら、時価総額のファクターリターンが高い→時価総額の大きい銘柄を買えば儲かる、と言うわけではありません。ファクターリターンは過去のデータを元に計算されているので、それまでの相場のパターンに変化があるとファクターリターンから予測される結果も変化してしまいます。
相場は当たり前ですが、日々変化します。そしてファクターリターンもその影響を受けて変化してしまいます。しかし、その変化を加味して、将来の予測に役立つ指標があります。それがファクターリターンの自己相関です。
相関はわかるけど、自己相関って何?
例えば、君が今日おやつにささみジャーキーを食べて、明日も明後日もささみジャーキーを食べたら、君が食べるおやつの種類の自己相関は高い、と言うことになる。
ささみジャーキーの次の日は、ほねっこを食べます。その次はたまごボーロを食べます。
そうなると君が食べるおやつの自己相関は低い、と言う事になるね。
なるほど、ある事象が繰り返し起これば、それは自己相関が高いということ?
その通り!株式の話に置き換えてみよう。例えば銘柄Aが先月上昇して、今月も同じように上昇した場合、銘柄Aのリターンの自己相関は高いということになる。
ファクターリターンの自己相関とは?
ファクターリターンの自己相関とは、ある期間におけるファクターリターンが、次の期間におけるファクターリターンにどの程度影響を与えるかを示す統計的指標です。例えば、時価総額のファクターリターンの自己相関が高いケースは、
・先々月、時価総額のファクターリターンが高かった(低かった)。
・先月も同様に時価総額のファクターリターンが高くなった(低くなった)。
ということになります。これは結局、ファクターリターンがある一定の時間内にどのように持続するかを測定するために利用されるもので、数式では以下のようになります。
$$ \rho = \frac{E[(R_{t} – \mu)(R_{t+1} – \mu)]}{\sigma^2} $$
$\rho$は自己相関係数で、$R_{t} $はt時点のリターン、$\mu$は平均リターン、$\sigma^2$は分散となります。
ファクターリターンの自己相関を利用する
ファクターリターンの自己相関を利用することで、過去のデータから未来のリターンを予測し、投資戦略に活かすことができます。時価総額ファクターリターンの自己相関が高い場合、翌月も同様の結果になる可能性が高いです。逆に、自己相関がマイナスが続いている場合はどういう状況かと言うと、
・大型銘柄が買われる(時価総額ファクターリターンが高い)
・翌月は大型銘柄が売られる(時価総額ファクターリターンが低い)
・次の月は大型銘柄が買われる(時価総額ファクターリターンが高い)
というように、ファクターリターンの推移がバラバラのときです。この場合は、次に起こることは前回の逆のパターンになる可能性が高いわけですから、それを見込んで反対の可能性に賭けることが有利になります。
じゃあ、ファクターリターンとその自己相関がわかれば完璧ってことですね?
残念ながらそういうわけでもないんだ。ファクターリターンの自己相関も変化していくものだからね。
なるほど、、ちょっと残念、、
実際にファクターリターンとその自己相関が把握できると、その優位性がもっと理解できるよ!
「大型銘柄が買われているな」とか「高配当銘柄が全然買われない」など、何となく感じていたことが、ファクターリターンを計算することで明確になります。また、さらにその自己相関を知ることで、その状況が近い将来も継続、あるいは反転する可能性を予測することができます。
直感に任せて、何だか大型銘柄が買われているから仕込んでこう!という、場当たり的なトレードで利益を積み上げることは難しいです。しかし、これらの数値を把握することで、「今日大型銘柄を買うべきかどうか?」の判断が、より精緻なものとなり、結果的に利益につながる可能性も高まることになります。