ファクター分析は株式におけるクオンツ分析の主な取り扱いテーマですが、定量的な分析手法やトレード方法は他にも多くあります。今日はそのうちの一つ、定量的なペアトレーディング戦略について少しご紹介します。
決算が良かったトヨタを買って、悪かったホンダを売るといったファンダメンタルに基づいた定性的なペアトレードもある一方で、定量的なぺトレードはそれとは異なったアプローチになります。
裁定戦略
ペアトレーディングは、裁定戦略の一つです。一つの銘柄にロングポジションを取り、もう一つの銘柄にショートポジションを取ることを含みます。あるいは、ショートポジションを取らず、ロングポジションのみで取引することもあります。この戦略の目的は、これら二つの銘柄の価格が時間とともに平均に収束するという期待に基づいています。
では、定量的なアプローチをとる場合、どういった手順になるか順を追って見てみましょう。
- 銘柄のペアを選択: まず、過去に同じような値動きをする二つの銘柄を選びます。これらは同じセクターの銘柄であったり、同じ市場要因に影響を受ける銘柄であったりします。
- スプレッドを計算: スプレッドは二つの銘柄の価格の差です。このスプレッドは平均回帰すると期待されています。つまり、時間とともにその歴史的な平均に戻る傾向があるということです。
- エントリーとエグジットのポイントを決定: スプレッドがその平均から大きく逸脱したとき(つまり、二つの銘柄の価格が大きく乖離したとき)が、通常、トレードにエントリーする良いタイミングです。トレーダーは、パフォーマンスが低い銘柄(それを買う)にロングポジションを取り、パフォーマンスが高い銘柄(それを売る)にショートポジションを取ります。スプレッドが平均に戻ったとき(つまり、二つの銘柄の価格が収束したとき)が、通常、トレードからエグジットする良いタイミングです。
- 平均回帰の強度を計算: これは統計的な分析を行い、スプレッドがその平均からどれだけ逸脱しているかを測定します。平均からの逸脱が大きければ大きいほど、将来、スプレッドが平均に戻る確率が高くなります。
- リスクを管理: ペアトレーディングはマーケットニュートラルな戦略です。つまり、相場が上昇していても下降していても利益を上げるように設計されます。しかし、リスクが全くないわけではありません。例えば、二つの銘柄の価格が期待通りに収束しない場合、損失を被る可能性があります。いわゆる「股裂き」ですね。したがって、ストップロスレベルを設定したり、保有するペアを増やすなどのリスク管理手法が重要です。
ここで最も重要となってくるのは、4. 平均回帰の強度の計算です。
2つの銘柄の値動きが、離れて→戻る、ってのが分かれば良いよね。
その通り!そしてその戻る確度が高い方が有利ってことになるね。
そんなことわかるんですか?
いくつかあるけど、ADF(Augumented Dickey-Fuller)検定というものがあるよ。
ADF(Augmented Dickey-Fuller)統計は、与えられた時系列が定常性を持つかどうかを判断するための統計的検定です。定常性とは、時系列分析において重要な概念で、多くの統計モデルでは時系列データが定常性を持つことが必要とされています。定常な時系列とは、その性質が観測される時間に依存しない時系列のことを指します。つまり、2つの観測値(銘柄間のリターン差)が平均値に戻る性質を意味しています。具体的には、
- 銘柄のペアを選択: 歴史的に一緒に動くことが多い二つの銘柄を選びます。
- スプレッドを計算: 二つの銘柄の価格の差を計算します。
- ADF検定を実行: スプレッドに対してADF検定を実行します。あるいは、スプレッドから回帰分析を行い、残差に対してADF検定を行うパターンもあります。ADF検定の帰無仮説は、残差が単位根を持つ(つまり、非定常である)というものです。検定のp値が有意水準(例えば、0.05)より小さい場合、帰無仮説を棄却して残差が定常であると結論づけることができます。
- 残差に基づいて取引: 残差が定常であるということは、二つの銘柄のスプレッドが平均回帰することを意味し、したがってペアトレーディングに適しているということです。2つの銘柄のスプレッドが大きく開いた時に、低い銘柄にロングポジションを取り、高い銘柄にショートポジションを取ります。スプレッドが平均に戻ったとき、つまり、二つの銘柄の価格が収束したときにトレードからエグジットして利益を確定します。
難しい。。今回はちょっとついていけません。。
言葉だけで説明されると混乱するよね。具体的な例をデータを交えて説明するよ!
助かります!
今回はとりあえず概要だけ理解してくれればOK!定量的なペアトレードとは、2つの銘柄のスプレッドで平均回帰の強さを測って、適切なタイミングで売買を行うこと。